LastUpdate02/04/10
戻る

長崎の県立高校改革


来年度実施で揺れる高校入試

 長崎県は、現在の中学2年生が受験する2003年春から、総合選抜制度を廃止するなど県立高校教育改革第1次実施計画を始める。来年という早期実施に中学校はとまどい、急に特色ある学校づくりを迫られた高校も対策に苦慮している。

 ◇「早すぎる」親や教員は反発

 親や教員には「総合選抜廃止は早くても再来年からと思っていた」という反応が多い。来春から廃止する宮崎県も、再来年から廃止する徳島県も、どちらも約2年前に表明している。それに対して「1年後に廃止」という長崎県教委の発表は性急な感が否めない。県教委は「03年4月からの高校の新学習指導要領実施に合わせた。遅らせると、再びカリキュラムを変更しないといけない」と説明する。

 しかし県教組の川路武広書記長は「中学は今年4月から新指導要領と学校週5日制が始まる。加えて入試制度の変更で、現場は3つの課題を抱えて大混乱する。総合選抜廃止を急いだだけではないのか」と反発する。

 いきなり新制度での入試に臨む子供を持つ親の戸惑いは大きい。これまでの受験データが使えなくなり、合格の可能性を計る“物差し”がなくなるからだ。「子供の実力がどの辺りに位置しているのかつかむのが難しい」と佐世保市の母親(48)は不安を訴える。県PTA連合会の山口隆会長は「間に合うと県教委が判断したのだから信頼するしかない」と言い「学校の特色や卒業後の進路などの周知徹底を」と注文をつけた。

 ◇大学受験を意識した学校づくりに

 総合選抜の下では、黙っていても生徒は振り分けられて入ってきた。が、単独選抜に移行する03年春からは、各校が生徒を集めなければならなくなる。改革は「学校の適正配置と統廃合」を柱の一つに挙げており、生徒にそっぽを向かれたら存続すら危ぶまれる。各校は生き残りに懸命だ。

 改革は「多様な価値観に対応した特色づくり」を各校に求めた。しかし計画を見ると、中高一貫教育の導入や理数科の設置など大学受験を意識した学校づくりに力を入れる姿勢が浮かび上がる。

 長崎北の尾崎寛行校長も「うちはほとんどが進学希望。少人数指導などで厳しくても3年後にきちんと大学に合格させられる態勢の強化の方が大事だと考えた」と語る。総合選抜で各校の学力は平均化され、難関大学への進学率は下がる傾向にあった。尾崎校長は「今後は東大など超難関大学への進学実績を上げていく」と意気込む。

 「つまるところ、総合選抜校は大学への通過点。希望大学へ入れてくれればいい」と言い切る中学生の親もいる。「特色づくり」は本当の意味での「価値観の多様化」に対応したものになっていくのだろうか。高校も、そして県教委も試される。

 ◇県立校の改革で私立も刺激

 「推薦入学や優秀なスポーツ選手の確保など私学がやってきたことを次々に公立が取り入れた。そして私学の大きな特色の中高一貫校をつくるという。どんな影響が出るのか予想しかねています」。長崎日大中・高(諌早市)の木下伸弘校長は厳しい表情で語った。

 県では、00年度、高校卒業者に占める国立大合格者の割合は14・6%で、全国平均の7・1%を大きく上回って九州でトップ。高校受験でも県立を優先する意識が根強いと言われる。そんな中で「特色ある教育をしてきた」と胸を張る木下校長。「公私入り混じった自由競争の時代に突入した。より私学の存在を示さなければならない」と話す。

 話題の中高一貫校は、長崎東、佐世保北が導入することになった。ある学校関係者は「私立の青雲(時津町)に対抗する進学校をつくるのが目的だ」と明かす。青雲は、1975年に中高一貫校として開校し、上の学年の学習を前倒しするなどで高い学力を養い、難関の合格者を増やしている。生徒は県外出身者が53%を占めるが、長崎市内も22%いる。在校生、卒業生には県幹部や地元経済界、医師の子弟も多い。

 県立高の教諭だった瀬下聰校長は「総合選抜で希望の学校に行けないのなら青雲で勉強しようと目的意識をはっきり持った生徒が入学してきたのは確か。県立高の改革で、うちもいい刺激を受ける。見直せるところは見直して、お互いが競争していけばいい」と話す。

戻る

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル